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トップマネジメント論再考
日本的経営の成功譚をするとき、多くの場合そのミドルの活躍が強調されてきた。

金井は『変革型ミドルの探究』において組織変革の実行者としてのミドルを描き、加護野は『組織認識論』の中で突出ミドルによる新たなパラダイムの見本例の創造を描いた。

だがこうした強みにかかわらず、日本企業が世界市場においてその存在感が薄くなりつつあることは認めざるを得ない。

ソニーは近年、アップルに後れを取っているが、その背景には最新の経営指標導入やカンパニー制などの流行りの理論の導入によりソニーの文化が変質していってしまったことが考えられる。確かにEVAやカンパニー制は経営の効率性を高める上では合理的かもしれない。が、こうした政策によって効率的な資源配分が行われたことにより、社員は「今収益の上がる」事業に目を向けるようになり、「将来収益が上がっていく可能性のある」事業には手をつけにくくなった。これによりソニー特有の自由にして闊達な理想工場は失われていった。こうした政策の導入に当たって中心的な役割を担っていたのは他でもない経営トップの出井伸之やストリンガーであった。もちろん彼らが悪いと一概にはいえない。事実、彼らの基本構想はハードとソフトの融合であり、その方向性は間違っていなかった(そのことはiphoneの成功によりアップルが証明してくれた)。が、間違っていたのはその基本構想を実現するための戦術であったのだった。この事例を考えてみると、トップの迷走が企業の暴走を生みだしたといえる。

三品は日本企業の慢性的低成長の原因を経営能力のある経営者がいないことであると述べている。日本企業の場合、現場から内部昇進で這い上がってきた人間が50代ー60代でトップの座につくことがふつうである。こうした人間は現場レベルのオペレーションには長けているが、未来の構想を練るなどの全社戦略を立てることには不慣れである。そうしたトップが全社をミスリードすると、ソニーのような組織文化の劣化現象を引き起こし、そのことによりミドルが腐り、組織は暴走していく。

日本的経営の特徴の一つに、長期雇用による技能の養成がある。このことで技能は継承され、改善が生まれ、現場レベルにおける優れた人材が育っていった。しかし、現場レベルで優れた人材の条件は必ずしも経営層レベルで優れた人材の条件とは一致しない。現場レベルの人材の層が厚くても、経営者としての人材の層がうすくてはソニーのような優良企業の劣化現象が他の企業においても発生していきかねない。こうしたトップマネジメントの弱さこそが日本的経営の限界であり、今後の課題である。いかにしてトップを育成していくか、それがこれからの日本的経営の乗り越えていくべき壁である。

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